なんで、あの時寝たりしたんだろう。
あたしは、あの人の危険性を深く考えていなかったんだ。
危ない人だなんて、今まで付き合ってきたから嫌という程知っているのに。
靴がないことよりも、ずっと体を触られたことの方が怖かった。
怖い、怖いの。
どうしてここに連れてきたの……?
あたしをどうしたいの?
ねえ、貴方はあたしを棄てたんでしょ?
もう、要らないって。
だからあたし、深く傷ついて、あの部屋からもあの国からも出て、新しい生活を始めたのに。
どうして…どう、して……。
ブルブルと震えが止まらない。
鼻が痛くなって懸命に涙を出すのを堪えた。
いつ帰って来るのだろう。
早く、…早く逃げなきゃ。
その時頭の中で、マークの言葉がリピートされる。
“この部屋から出たら、タクマがどうなるかは想像しておいてね”
…耐えていた涙が遂に溢れた。
あたしの正解は一体何…?
分からない…分からないよ…………。
結局あたしは、マークが帰ってきた翌日の朝まで震えたままその場に佇んでいた。



