ガタガタと、不定期に訪れる振動に体は反応を示したようで。
ぼんやりと意識が定まっていく。
[…起きたかい?]
あの人が綺麗に笑った。
貴方が、と言った方がずっと正しいのかもしれないけれども、あたしは今は頭が働かないから。
動くことさえ、ままならない。
だけどここがあたしの好きな琢磨の軽自動車ではなくて、あの人であり、貴方でもあるMark Steveが所有する黒塗りの高級車の中であることは明白だ。
[もう少し眠っているといい。まだ動き辛いだろう?これからホテルに行くところなんだが、まだ時間があるのでね]
「琢磨に何をしたの」
[……ははっ。いきなり、本題に入ってしまうのかい?お楽しみはもう少し後でいい]
「じゃあ貴方はあたしの性格を覚えている?あたしはきになると、貴方がどう言ったって口を割らせる女よ」
[そうだったな。ならば言えばいいのか。君がどう想像しているかは定かでないが、あの男はもう生きていないんじゃないかな]