マンションから出る。

今は、マンションを出るには少し早い14時。

パーティーは16時からだ。

だけど、こんな時間から家を出るのは。


「…和佳菜。美容室、今日急遽休みにしてもらったんだから、遅れそうになることするなよ」

「してないわよ?というかヘアアレンジくらい自分でできるのになんで勝手に予約なんて入れたのよ」

「俺じゃねえよ。お祖父様だ、お祖父様。孫娘の綺麗な姿を見たいんだろ」

「…いつか、あんな人の側から離れて生きたい」

自己中心的で人を振り回すことしか頭にないあんな人と。



「そうだな」

出来ないと知っていても、気持ちが分かっているとは言えない。

あたしはきっとあんな人が選んだ人と結婚して、あんな人がさせたい暮らしをさせて、あんな人が望んだ頭の良い子を育てることになるのだろう。

仕組まれた世界。

そんな運命が嫌だったから、あの人に逃げたのだろうか。