「さよーならー」

委員長の声に合わせてリュックを背負った。

「和佳菜、もう帰るの?」

終礼を終えた直後、誰にも見つからないように早めに出たのに、鋭いこのみに見つかってしまった。

「え、ええ…。そうなの、今日は早く帰ってこいって言われていて」

「和佳菜って一人暮らしだよね?誰か家に来てるの?」

「いや、あの」



「和佳菜」



ああ、もう。

だから早く出たかったのに。



「……琢磨、外で待っていてって言ったでしょ」

振り返ってみると、やはり知っている顔だった。

あたしが嫌がると予測出来なかったのかしら。

「そんな低い声だすなよ。その子もこわがってんだろ?」

その声でハッとした。

そうだ、ここにはこのみがいる。

他にも、心配そうにこちらをみるクラスメイトがいる。

「…琢磨がいるせいでしょう。校門にいてって言ったのに」

「そんなこたあ知らねえよ。俺は、こっちに来るつもりだったの」

ニヤニヤ笑う琢磨が憎たらしい。

そんな予感がしていたから、早く出たかったのに。