「帰る」
「ちょっと、だから」
「ふふ、まだ辞めるとでも思っているの?姫をやめるなんて言ってないわ。それは、少し保留にしておく。ねえ、久しぶりに送ってよ、綾」
「俺、は」
「じゅ……夢に、許可でも取ればいい?」
ニコリと笑って綾に訴えかける。
一瞬ジュリアと間違えそうになったのは許してほしい。
綾はただならぬ何かをあたしから感じ取ったのか。
「……わかったよ。行けばいいんだろ」
面倒臭そうに頭をかいて、了承した。
「物分かりがよくて有難いわ」
ニコリと再び綾に微笑みかけた。
きっと目は笑っていなかっただろうけど。
支度を終え、階段を降りると、見慣れた顔が揃っていた。
「和佳菜さん、もう帰るんですか?」
話が終わったら遊ぼうと思っていたのだろうか。
少し寂しげに眉をひそめた、したっぱの彼らにあたしはにこやかに微笑む。
「…帰る、けど。明日も来るわ。だから、また遊びましょ?」
彼らの顔は、少し晴れたがまだ少し曇っていた。
だから、あたしは少し考えてから。



