「…急ぎますよ!芸術棟から教室棟は遠いんですから」
そう言って走り出す。
本鈴10分前に鳴る予鈴からもう5分経ってる。
間に合う気はとてもしないので本当は心の中では諦めていた。
でも、あの笑顔を見ていたくなかった。
一刻も早く、逃げ出したくなった。
何故だろう。
考えてもわからない。
さっきの不敵な笑みとはまるで違う。
本当に心から笑っているように見えた。
心臓がドクンドクンと大きな音を立てる。
おかしい、おかしいおかしい。
こんなの感じたことがない。
いや、どこか似てるものをあたしは感じたことがある……。
でも、あれは。
もう思い出したくない。



