「だから、自分の事を蔑ろにするような発言は控えてくれ。お前を守る俺や獅獣のために」

自分を蔑ろにする言葉を発する女を姫と呼びたくはない。

彼は遠回しにそんな事を言った気がした。

「分かったわ。気をつける」

少し後になってから、これがあたしのためでもあったという事をあたしは知ることになる。

「着きました」


菅谷さんがそう言ってドアを開けてくれる。

目の前にはいつもの倉庫。

だけど何故だか、いつもとは違って見えた。

仁のあの言葉のせいかもしれない。




“ 護ってくれる人たちのために。”


「行くぞ」

そう声をかけた仁にあたしは微笑んだ。