沈黙が流れるが、それが嫌だとは思わなかった。

BGMをかけない菅谷さんの車は静かで、居心地が良い。

眠りそうになった時、窓から外の景色を眺めながら仁が呟いた。

「お前は、ましてやこの前正式に姫になったばかりだ。狙う輩など大勢いる」

そう、廊下ですれ違った女の子たちが喋っていたようにあたしは先週姫になったばかり。

3日ほど前。

集会が行われ、あたしが姫になるかの審議が行われた。

驚いたことに、ここに居たいと正直に伝えたら、反対意見は1つも出なかった。

あたしを調べた人間ももちろん居たらしいが、相楽さんさえも見つけられなかったあたしの過去を調べ見つけたものなど当然おらず、表向きの情報しかみんなの中に出ることはなかった。

そしてあたしは、疑われることなく無事に姫になれた。

不安だった2週間が終わりを告げ、これで疑われることはなくなった。

だけど、正式に決まったからこそ、安全だと言えないのだ。

「だから、あたしのことなんて誰も襲わないと言わないでくれ。…お前は、いつでも狙われる。仲間を何人か連れてきて守りたいところを仕方がなくいま1人でやっているのが現状なんだ」

彼の優しい言葉が、静かにあたしを突き刺す。