「早く倉庫に行くぞ。あいつらがどこに潜んでるかわからない」

仁が焦っている理由も分かる。

あたしの情報によって、交渉に失敗した南達Breakが荒れているとの噂をよく聞くのだ。

昼夜問わず人を無差別に襲う行為は益々エスカレートし、獅獣でも怪我人が何人か出ている。

一般市民さえも襲うらしく、このあたりのNo. 1である獅獣や、傘下の族は忙しそうにあたしの周りをうろついている。

あたしのいる学校はその激戦区であるロンスターダント街からは離れた隣町にあるのでそこまで大きな変化はないのだけど。

いつ何が起こるかわからない。

常に危険だと思って生活しろ。

油断はするなと、仁に言われた以上、琢磨からもらった自由はもはや何にもならない。

再び歩き出した仁にもう従う以外の行動は出来ず、黙ってついて行くことを選んだ。

昇降口から出てすぐに裏門にまわる。

呼んでいた黒塗りの高級車は、既にいつもの門の死角に停まっていた。

「…お疲れ様です。仁さん、和佳菜様」

乗り込むと、最近知った菅谷(すがや)さんという仁の専属ドライバーさんが運転席に座っていた。