「和佳菜、バイバイ!」
あたしに気がついた流梨花が手を振ってくれた。
「バイバイ」
今までは、そんなこともできずに綾に連れられて教室を出ていたから懐かしくて仕方ない。
仁はこんな風にあたしを迎えに来てくれるけど、それ以外の行動は学校内では自由にしてくれた。
「バイバイ、また明日」
そう微笑んでから、再び仁の背中を追いかける。
少し前に廊下を出たから、まだこの階にはいるだろうと急いで教室を出ると。
「あ、…いたの」
思いがけず、教室前の廊下で仁はあたしを待っていた。
「お前を置いて行ったら一緒に帰る意味がなくなるだろ」
行くぞ、というと、今度はあたしの手を強引に引っ張ると、歩き出す。
2つ上の仁はこちらの学校に通い始めてから毎日ホームルームには出ずにあたしのことを迎えに来てくれる。
「あの2人付き合ってるのかなー」
「そうなんじゃない。この前、正式な姫になったらしいし。総長が転校してくるくらいでしょ?溺愛だよ、溺愛」
学校を出る途中で女子2人組が大声で喋っていた。
彼女らとすれ違っても、仁は表情1つ変えずに、前を向いて歩き続ける。



