「ごめん、日誌、もうすこしで書き上がるから先に歩いていて」
「もう書き上がるなら待ってる」
終会直後のバタバタとした放課後。
これから掃除が始まるのにどかりとあたしの横の席に腰掛けるあたり、横暴なところは隠しもしないようだ。
だけど、幸いなことに仁はそのような拘束はしないから、あたしは気がとても楽だった。
「邪魔になるから、待つなら廊下で待ってて」
「お前は、目を離すとどこに行くか分からないから、ここで待つ」
「あたし、そんなに危なっかしい人じゃないのだけど」
そう言いながら、あと一言感想を書けば終わる日誌を無事かきあげ、準備をしてあったリュックを背負う。
机をあげようと屈むと。
ひょいと空気が軽くなり、気がついたら机の上に椅子がかけてあった。
「…早く行くぞ」
あげてくれたその人は、一瞥してからあたしに背を向ける。
「あ、ありがとう」
あたしだって大したお礼も言わずに、その背中を追いかけた。



