「あたしの人生は楽しいことばかりじゃなかったもの。楽しいなんて思えない」
「でも、楽しいと思わなきゃ。錯覚してたら、意外と楽しくなるかもよん」
「ジュリア…」
「楽観主義もいいとことか言いたくなる?」
「そうね」
「あたしだってここに来た時はそうだったよ。だけどねえ、少し変わった気がするの」
「あたしもそんな気がしてた。ジュリア、変わったよね?」
「そう、綾がね。あたしはあたしらしくいてって」
そんな頬を赤らめていう、ジュリア。
「もしかして、ジュリア」
「ふふ。そうだよ。きっとワカナの思ってる通り。あたし、綾と付き合ってるの」
綾があたしに必要以上に近づかない理由はこれだったのか、とあたしは一人で納得した。
警戒するのも、ジュリアに余計な心配をさせたくないから。
彼女は、あくまでもジュリア。
あたしはただの獅獣の仮の姫。
それ以上にはならないという線引きを、綾の中でしていたのだろう。



