言い終わる前に、仁は既に歩きだしていて。

「南に話を通せ。至急確認したいことがあると伝えろ。おそらくだが、すぐに理解するだろう」

とだけ3階の相楽さんの部屋に伝えに行くと。

「和佳菜、俺は出かける。お前は、夢と部屋にいろ」

「大丈夫なの、仁」

あたしの心配そうな顔をみた仁は、優しげに目を細めて。

「なぜ心配するんだ?俺があいつらより弱いと能無しだと言いたいのか?」

そんな自信ありげに囁き、それから綾に目を向ける。

「綾」

「俺もついて行かせてくれ」

「俺は、お前に失望した。しばらくは頭を冷やしておけ」

「…仁!」


彼はまたツカツカと歩きだして、それから1度も綾を見なかった。