どんな話でもやがて終わりはくる。


「着きましたよ」

美術室に到着したのをさかいに、険悪なムードが緩んだ。


「そうだな」

まだ、流梨花は来てないみたい。


トイレに行くだけだからあまり時間はかからないと思ったんだけど。


「一応説明しましょうか。ここが美術室です。選択授業の際に使います。あたし達の選択授業は2年なので使うのは少しでしょうが」


「そうだろうな」

そういいながら、ゆっくりと頷き、周りを見渡した。


「眺めがいいな」

楽しそうに、グラウンドを見渡せる大きな窓枠に腕をかける。

グラウンドでサッカーをしている人が豆粒のように小さく思えた。

「3階なのでさっきとは違うように見えるかもしれません」

「ここによく人は来るか?」


「人ですか…。そうですね、割とよく来ると思いますよ」

ここは授業で2年生がよく使っているし、放課後は部活で使っている。

確か美術部は週に5、6回あったかと。

「そうか…人が来ないのは?」


「そんなこと聞いてどうするんですか?」


「サボる時使う」


この人、バカなのだろうか。


それ、あたしに聞くの間違ってる。


どんなに授業がつまらなくても、授業にだけは出てとママから懇願されていた。

世界でたった一人のママ。

パパを失った悲しみを知ってるあたしは、これ以上ママにそのツラさを味あわせたくなかった。

大げさだ、なんて言われるかもしれないけど。

何かに巻き込まれる可能性は否定出来なかった。

ママのお願いさえ、守ればあたしはここで自由にして良い。

だから、授業には出なくちゃいけない。


寝るなとは言われてないから、全部寝てるし。