「そっかあ…。ワカナも色々とあるよね。大丈夫よ、気にしないで」
「Juliaは随分前に抜けたよね」
「大学を卒業する時に、もう関わらないと決めたの」
「だけど、そんなに甘い世界じゃないでしょ」
何度か、彼女が招集にかけられているのをあたしは知っている。
その時はあたしはまだあの人の側にいたから__…。
「でも、あたしは行かなかった」
「…そうね」
そう、彼女は来なかった。
あの人がイライラして電話を投げていたのも見ていたから、そう悟ってはいた。
策士としても、麻薬製造者としても絶対的なエースだった彼女が、少し脅せば簡単に戻ってくるとあの人は信じていたから。
当時の彼女は明るいのに、どこか寂しげな、力を入れれば簡単に折れてしまいそうな、そんな脆さがあったから、なおのこと帰ってくると信じていたのだろう。



