彼女は、一瞬大きく目を丸くして、それから。
「中へ入りましょうか」
と、微笑み、否定も肯定もしなかった。
「…どうやって、その名前を知ったのかしら」
やや高圧的な表情でベッドに座ったあたしを見下ろす。
彼女はベッドには座らなかった。
「あたしの質問に答える方が先です。それからなら、話すことができるかもしれません」
話の主導権は握らせない。
あくまでも、あたしが持つ。
彼女はまじまじとあたしの顔を見つめ、…やがて驚いたようにこう聞いた。
「貴女、まさか。あの、ワカナなの?」
「ええ、きっと貴女がいうワカナはあたしよ。どうなんですか?………ジュリアなの?」
彼女は大きな目をさらに大きくはためかせて、それから。
「そう!Julia Abbott。それがあたしの本当の名前。久しぶり!ワカナ」
こんなところでジュリアと会うとは思わなかった。
あたしの過去を知るジュリアに。



