「初めまして、だよね?私、あなたと会ったことないもんね。あれ、もしかして仁から何か聞いてる?」
「いえ、なにも」
「あ、だよねー。仁が私のこと話すはずないよねえ。恋人って勘違いされたら困るとか言ってたし」
「は、はあ」
「仁ってば、酷いよねえ。あたしのことすぐ馬鹿にするし。そのくせ、すっごい無表情で全然自分のこと喋らないもん。あ、それは悠人も一緒か」
ここは仁の国で仁が王様なのに。
彼女はそんなことを一切気にせず、文句を言う。
この人の大物になる雰囲気をそんなところで感じた。
「メンバーのみんなとは会った?あ、でも放浪人には会ってないでしょ?あいつ、ほんとすぐどっか行くのよ。大事な時はここにいるけど、基本的には溜まり場なんて来ないの」
あのどうでもいいので、早く教えてください。
「ひゃっ、ごめん!また、独り言が多くなっちゃってたよね。私ったら馬鹿だなあ。おんなじこと繰り返してる」
そんなことをしていれば、少しずつ目が慣れてきて、ゆっくりと瞬きをすると。
「…え?」



