白いベッドが4つ。

向かい合って並んでいる。



仕切りのカーテンはないものの、戸棚には沢山の資料と半透明の瓶が並んでいる。

まるで保健室のようだ。


その手前のベッドに腰を下ろす。



ふとした時、ヒリヒリと、手のひらが痛む。

赤くなっているけれど、大したことはない。


それよりもきっと仁の方がずっと痛かった筈だ。

あたしの手のひらが赤くなるほど。

申し訳ないと言う思いが突き上げてくる。

どうしてあたしはこんなにも弱いのだろう。

気が動転していたとはいえ、人を叩いてしまうなんて。

冷静になれ、冷静になれ。

頬を両手で押さえると、はあとひと息ため息を漏らす。

そういえば、あたし、携帯置いてきたんだった。

取りに行かなければ。

本名で登録していないとはいえ、あたしが震えるほど怖がった相手だ。

みんな興味があるだろうし、調べたくはなるだろう。

そこからあたしの過去に触れる人も現れるのだろうか。


まだ、まだダメなんだ。

あたしの過去を知るのはもう少しあと。

あたしが笑顔であの人とあの日のことを話せるようになるまで。


静かにたちあがると薄暗い部屋の中でかろうじてドアを見つけ出した。

ゆっくりとドアノブをひねると。


「わっ!」

目の前に人がいたようで驚いた声が聞こえた。