「…和佳菜」

「ごめんなさい。1人になれる部屋はあるかしら。少し、気分を落ち着かせたいの」

「やっぱ、大丈夫じゃねえだろ。ほらこい」

ぐいっとしゃがみこんでいたあたしを引き上げたけれど。



『和佳菜、俺はお前がいないとなにもできないんだ』



貴方(あの人)があたしにそう囁いた。


「やめて!」


その手を払いのけてしまった。


ハッと、息を飲む。



「ごめんなさい、仁。あたし、そんなつもりじゃ」

「陽太。救護室は空いてるか?」

「は、はい」

「なら、そこに行け」

仁は素早くあたしに命令すると、何事もなかったかのように、どこかに消えた。




あたしが、突き放してしまった。


「…ついていきましょうか?」

気を遣った陽太があたしにそう声を掛けてくれたけど。

「大丈夫、救護室は目の前でしょう?それくらいなら歩けるわ」


仁の手を叩いてしまった感覚が蘇る気がして断った。

壁に手をつき、どうにか立ち上がると、よろよろと目の前の救護室に向かった。