蒼の花と荒れる野獣



表面のガラスは無残な姿となっても、あたしはそれに気を配ることはできなかった。

震えが止まらない。

足がガクガクと揺れて、立っていられなかった。

ルルルと、それでも電話は鳴り続ける。

着信は止まってくれない。



「やめて…やめて………!」


もう追いかけてこないで!


あたしを自由にして!




「和佳菜?」




「えっ」

その時、脇から手が伸びてきて、赤い着信を切るボタンに触れた。

ぷつりと切れて、画面が真っ暗になる。

そちらを振り返ると、仁が心配そうにこちら見ていた。

「平気か?」

「…へ、平気よ。ありがとう、切ってくれて」

強がりにしかならないけれど、そう言わないと自分が壊れていきそうな気がした。