ふわりとあたしの右手を取ると、優しく、けれど決して離さないように引いて、あたしをベッドに座らせた。
は…?
出会った時と同じように命令しているはずなのに。
なんだか情けないように見えるのはあたしの目がおかしいからかもしれない。
「頬赤いけど、熱でもあるんじゃないの?」
「…ねえよ」
その沈黙はなに?
聞きたくてうずうずとしてしまう心を丁寧になだめた。
聞いたらなんだか、仁が叫び出しそうな気がしたから。
「本当に?なら、もう少しここにいようかしら」
そう言って、改めて仁の方を見た。
「ねえ、仁。ずっと聞こうと思っていたのだけど、どうして総長室だけ地下にあるの?」
他の相楽さんや綾、翔の……所謂、幹部と呼ばれる人たちのそれぞれの部屋は3階にある。
幹部室と呼ばれる彼らが何かを話し合う上で必要な部屋も、3階にある。
だけど、総長の部屋、つまり仁の部屋だけはどこにもなくて。
不思議だなとは思っていたのだけれど。
「先代が隠れ家みたいにするのが夢で、どうしてもやりたかったらしい」
カクレガ、と復唱してもそれがなにを意味するのか分からない。



