「染みるぞ」

そう言った瞬間。

「いっ……た」

思いっきり消毒液を湿らせたコットンをあたしの傷の患部に押し当てた。

「…痛いわ、仁。強く当てすぎよ。…っ、そんなに当てなくても」

「ちゃんとしないと跡になるぞ」

「…こんなの」

こんな小さな傷なんて、跡になっても気にならないのに。

なかなか痛くて涙が滲んだ。

それをハッと見つけた彼は。

「…すまない。大丈夫か?」

なんてぎこちなく手を伸ばしてくれる。

それがなんだか酷く不自然でおかしく見えたのだから。

「ふふふ」

なんだかつい笑ってしまう。

「はっ、なんだよ」

「慣れてないのね」

陽太を疑ってなどいなかったけど、それでもやはり女の扱いに慣れていない。

消毒液が染み込んだコットンをあたしの肘におしつけるのも、泣きそうになったあたしにどうしようかと思いつつ、手を差し出すのも、その証拠。


「総長なのに」

「うるせえ」

「…女の子の扱いなんて慣れてると思ってた」