「和佳菜」
パシリと強く右腕を掴まれた。
「うわっ!…え、なに」
誰に?
もちろん仁に。
その彼の目と目が合い、突然のことでなにも言葉を紡げなかった。
「なんで俺の前、通り過ぎていくんだよ。どこいくつもりだ」
その通り。
仁が目的じゃないのならば、なんのために二階に上がったか分からない。
「考え事をしていて」
貴方のことを考えていてなんて言えるわけもなく。
はあとため息をつかれたのは仕方があるまい。
「こっちだ」
そう言ってどこか暗い部屋に入るとその中にある階段を降りた。
階段が2つあるなんて1週間通っていても、知らなかった。
ここを使う人なんてそんなにいないのかもしれない。
ここは場所で言えば一階だけど、…あ、また降った。
「あれ、救護室じゃないの?」
「そんなとこじゃなくても怪我の手当てくらいできる」
「じゃあ、どこに行くの」
「つけばわかる」
いや、わかるのでしょうけども。
いちいち下にいく意味を聞いているのですが。
しばらく進むと、あるドアの前でいきなり仁が止まった。
そこは【総長室】というプレートが貼ってある場所。
って、総長室?



