その暖かさに頭がおかしくなったのかもしれない。 それでも彼が、すごく悪い人間とも言えなかった。 今だって、あたしの脆さをこの人は。 ただ静かに受け入れてくれる。 「仁」 「なんだ」 「仁……っ」 「だから、……」 なんだ、とあたしの顔を見た。 見られないように顔を隠そうとしたけれど、それは彼の手によって阻まれて。 「お前…」 あたしの溢れ落ちる涙を見ても。 その先を彼は言わない。