「怖い怖い、仁を怒らせちゃダメね」
ケラケラと笑って見せる。
「そう言いつつ、さして怖いとも思ってねえんだろ」
「ご名答」
「和佳菜」
「あたしが何者かって?ただの駆け引きが上手い女の子よ」
「…そうじゃねえだろ」
「そうじゃないって何故言い切れる?あたしは事実を述べているだけよ。それに、調べると言ったのは貴方のほう。問題の答えを聞くのはご法度よ?」
「…じゃあ質問を変えよう。お前はなにを抱えてる」
「何でしょうね。色々、よ」
それだって、あたしはあなたに教えるつもりなんてないの。
あたしの心はあたしだけのもの。
それからまた沈黙が続いた。
バイク男を運びに、獅獣の人たちが何人か来てくれた。
その中には陽太の姿もあって。
「無事でなによりです」
真っ直ぐに走ってきてくれた彼は、あたしにそう言って、微笑んでくれる。
「…ありがとう」
その穢れのない笑みに、心が落ち着きを取り戻すことができた。



