蒼の花と荒れる野獣


「ねえ、仁。あたし、あの男と話したいの」

「ああ、確かめたいんだっけ」

いいだろうとだけ伝えると、男の元に向かう。

あたしもそれを追い、ヘルメットを外すと。


「…違った」

ぐったりと横たわっているその人は、あたしが思い浮かべていた人ではなく知らない男だった。

「知り合いじゃねえのか?」

「ええ、…なんだか見間違いだったみたい」

胸の内に落胆が広がる。

「おい、起きろ」

「んっ…?」

頬を叩いて仁が起こした。

「お前、名前は?」

「…教えられっかよ」

「まだ粋がる気か?潰れてる時点でお前の負けなんだよ。聞いてんだから答えろや」

「まあまあ、仁。このこ、死んでなくて良かったわ。これで死なせちゃってたら、あたし生きた心地しなかったもの」

死なせるつもりなんて、さっぱりなかったし、死なないと思っていたけど。