「え?」
「走って逃げろ。ここから、少し歩けばロンスターダントの中央道路に出る。この時間なら人が多いから、奴の目は眩ませるはずだ」
「仁は?」
「え?」
「仁はどうするの?」
あのバイク乗り、きっと只者じゃない。
仁が危ないじゃないの。
「俺はあいつと鬼ごっこでも楽しむさ」
貴方の笑顔はあたしに不安なんて見せないけど、あたしの不安を煽った。
銀のバイクはギリギリのところであたし達を避けると、数メートル先でUターンをしてこちらに向かってきた。
「早く」
「…」
「行け!和佳菜!」
バイクに乗った仁があたしに叫ぶ。
逃げろと、ここにいるなと。
だけど急に。
本当に突然に、あの人の声がした。
『お前があいつを止めろ』
ふわりと昔の感覚が戻ってくる。
あなたはあたしを止められないけど、今のあたしならあなたを止められる。
あたしね、男の子に守ってもらうほど弱くないの。
喧嘩はできなくてもやれることはたくさんある。



