2人でバイクを避ける。
右に左に蛇行するバイクはあたし達のことをなかなか捕まえられない。
うん、無理だと思って欲しい。
あなたはあたしを止められないよ。
バイクとの鬼ごっこに少しだけゆとりを持てたのは、ビルの隙間にあたし達が逃げ込んでバイクがそれを探し当てられないせいで。
だけどそれだって、見つかって仕舞えば、終わりだ。
ここにいられるのは僅かな時間。
だからこそ決意して、彼に問いかけた。
「ねえ仁…」
簡単に耳打ちをして、それから降ろすように言った。
「んなのさせるかよ。俺はお前に傷1つ付けねえ約束してんだ」
約束…?
一体誰と、そう聞こうとした時。
ヴォンヴォン…!
バイクのエンジン音が薄暗い街に響いた。
どうやら思ったより早く見つかってしまったらしい。
「いいから。これしか方法はないでしょう?」
彼にそう問いかけても、返事はない。
ただヘルメットの中でなにが最善かを考えていたのだと思う。
「和佳菜、行け」
低く、野獣が唸るように彼が言った。



