歩きだったこの前は30分以上かかった道のりも、バイクでは10分と少し。
仁も綾や翔のように安全運転だった。
あたしには何もしないということを教えているようだった。
怖がることも、悲しむことも。
「今日、南とあったらしいな」
少しの間を置いてから珍しく仁から話しかけて来た。
「…ええ。楽しくお喋りしただけよ」
「綾からも聞いてると思うが、あいつとはあまり親しくしないでくれ」
「綾から聞いたときも疑問に思っていたけど、何故かしら」
確かにこの前家に来た時からなんとなく嫌な臭いを放つ男だったけど。
だから、あたしも容易にドアは開けないし、話すときも少し身構えている。
南にそれを見破られたことはないけれど。
できるなら聞いておきたい。
あの男が何者なのか。