「いいえ、そういうわけじゃないわ。けど、どうしても申し訳ない気持ちがあるから」
いい加減そんなことないって思わなければならないんだろうけど。
まだ、何を話したら良いかもわからないから帰りはいつも無言。
仁は見たところかなり忙しい人のようだ。
綾をはじめとすると幹部のメンバーが言っていたように仁がここにいる時間は少ない。
それでもあたしが帰る時は必ずいるのだけど。
そんな忙しい人にこんなことをさせていいのだろうかと思うと、どうしても申し訳なくなってしまう。
「俺が引き受けたことなんだから、気にするなと言っている。何度言わせるな」
どこか威厳を感じさせる佇まいに何を言ったらいいのか戸惑う。
「うん、ありがとう」
だから、あたしが言えることはこれくらいで。
仮にも姫という立場であるのにあたしは何もできないのだと実感してしまった。
「…行くぞ」
仁もいつもバイクであたしを送ってくれる。
いつのまにかあたしのヘルメットまで準備されているのだから、少し驚きだ。
「うん」