「そういえばうちの学校に獅獣の子っているの?」

「居ねえよ。俺が初めてだ」

「…ねえ、ずっと思ってたんだけど。どうしてうちの学校に来ようと思ったわけ?」

仲間を追って来たわけでもない。

編入試験だって簡単なものではないはず。

じゃあなぜ……?


「おっと、バイクの鍵忘れて来た。教室に取りに行ってくるわ」

そう言って、小走りで校舎の中へと消えていった。

「ちょっ!」


棒読みで放った彼の言葉は恐ろしく忘れてきたように聞こえない。

これは逃げって考えていいわよね?

話をそらすもなにも言うことから逃げるんですか。

そこまで秘密にしなければならないことなのかな。

「あれー?お姫様じゃん!この前ぶりー」

そんなことを考えていた不満げなあたしを見つけたのは綾じゃなくて。


「南さん、」


この前出会った流暢に喋る男だった。