「和佳菜…?」

『これから一言も喋らないで』

冷たくそうあしらわれて、なんだか不安だ。

わけがわからない。

その時。



『…あのぅ、どちら様ですかあ?』

全く違う人の声が聞こえたのだ。

よく地声を変えるモノマネをする人は見たことがあるけど。

でもどんなに頑張って変えても、その人らしさが出てしまうものだ。

だけどそこにいるのは、本当に和佳菜なのかと俺も疑ってしまうほど、彼女のいつもの声とはまるで違った。

『え、お姫様でしょー?そんなことしないでよ。びっくりしちゃうじゃん』

遠くで聞こえる南の声も若干硬い。

当たり前だろう、声ひとつで既に別人のようなのだから。