そのドアが閉まる直前に。
「僕やっぱり気になっちゃう、あの部屋の住民さん。見てくるねえ」
そう言ってエレベーターから出た。
「ちょっ、お前!」
そうだった。南はそうやって人を欺くのが天才的に上手かったんだった。
踊らされていた、と知ったのは後悔したすぐあとだった……。
「もしもし和佳菜?今から誰が来ても絶対にドアを開けるなよ?」
慌てて電話を掛けると、理由も説明せずにそう言った。
『それはわかったけど、何故……?』
「話してる暇はねえ。とにかく、絶対に開けるな、約束できるな?」
案の定理由を知りたがる彼女はそう言ったけど、まずは約束をさせたかった。
ピーンポーン……。
案の定、インターホンが鳴る。
『あ、誰か来た』
「開けるな。静かにしてろ」