「…綾、こっちよ」
2DKの少し大きすぎる間取り。
その中で1番大きいリビングと呼べる部屋に彼を案内した。
「…お前さ、入ってから言うのもなんだけど、気軽に男を家にあげんなよ?」
「何故?」
そうあたしが聞いた瞬間、綾はあたしの手首を引いて。
「こういうこと、しだす輩がいるからだよ」
あたしをソファに押し倒した。
心拍数の上昇に、あたしは戸惑いを隠せなかった。
上に綾が跨る。
「俺が体重かけたら、お前動けねえだろ?そういうこと」
そうだ、忘れていた。
こんなあたしの笑った顔が見たいって言う変人でも、男なんだ。
「ちゃんと、用心しなさい」
「いたっ」
ぺちん、と強めのベコピンが額にやってきた。
それから、あたしから離れると。
「それで、話って?」
…全く、マイペースな奴である。
「今、お茶出すわ。コーヒーと紅茶、どちらがいいかしら」
「別に気ぃ使わなくていい。とにかく座ってくれ」
そう言われたから、綾が座っている向かいのソファに腰を下ろした。
「で、南のことってなんだ」
「それが…」
そうしてあたしは南の一件を詳しく綾に話すことになった。
「…そうか。南が」
話を聞き終えた綾は思ったより冷静だった。
総長が死ぬとか言われているのだからもっと焦ってもいいのに。
ああ、でも彼はそんなことを言われなれているのかもしれない。
なんて今更のように思った。
死ねぇえええ、とか口にするような集団でのあるのだし、暴走族って。
こんなことに驚いていたら、副総長なんて務まるはずがない。
…忙しくて、倉庫を開けることの多い仁の側にいるのなら、もっとだ。



