「なんだ」
「…南についてよ」
翔や下の子たちには、あまり聞かれない方がいいと思ったので、彼らの前で話すことは避けざるおえなかった。
それでも副総長の綾の耳には入れておきたい。
「お前のうち、入れるか」
しばらく黙った後、綾はそう言った。
あたしの家か。
「酒と煙草臭さで満載の部屋でいいなら、いいけど」
消臭だって昨日は頑張ったのだ。
あ、正確には頑張らさせたのか。
酒飲みに無香料の消臭剤を大量に買わせて撒き散らすように指示を出したから、あたしがしたわけではないものね。
それでも多少は残ってしまう酒とタバコの匂い。
…少々オーバーに言っておかないと、これで臭いないって言えるのかとか言われたら嫌だからね。



