アッシュの赤髪に、深い彫りの顔立ち。
キリッとした眉に大きな二重の目。
通った鼻に形の綺麗な薄ピンクの唇。
きっとあたしが立っても、見上げるくらい高い身長。
「高岡 綾(たかおか りょう)。よろしく」
たった一言、それだけした挨拶。
だけど。
たったそれだけで。
彼のオーラが教室のすべての空気を飲み込んでしまう。
それほど大きな力を持っているのが、はっきりと分かった。
こいつ、ただ者ではない。
こんなオーラ、威圧感、ずっしりと重たい黒い目を持ってる人なんてそうはいない。
何か特別な重たいものをこの人は背負っているんだと、直感的に感じた。
不意に、チラリとこちらを相手が見る。
どきりと、不思議な音がした。
なんだろう?これ。
それから、高岡綾はニヤリと笑って、口を僅かに動かした。
え……?
なんとなく、言われたことがわかった気がした。
あたしの席は教卓から遠いからはっきりとなにを言ったまではわからない。
でも、それは一体どういう意味…?
ん…?
この人、どこかで……。
「…はい。みんな拍手。ほら、拍手するんだよ」
空気に飲み込まれていたまっちゃんが我に返ったように拍手をしだした。
つられるように、みんながパラパラと手を叩く。