でも、こうして目をつぶってみるとあの人の顔を思い出してしまう。
何日、何ヶ月、何年、経っても。
きっと忘れることが出来ないのではないか。
あの光景を。
『お姫様、行け。逃げろ、…早くっ!』
…あの日。
何が起こっているのか、よくわからなかった。
ただここにいるのは、policeと背中に書かれた青い服の男達と、あの人とあたし。
それだけしか分からなかった。
引き摺られても、顔が血で真っ赤になっても。
あの人は叫び続ける。
『追え。あいつをとらえろ』
冷静な声で背中にpoliceと書かれた青い服を着た男の1人が、あたしを指差して指令を出した。
それを境に1人、また1人とあたしに襲いかかってくる。
『やめっろ…!』
それを必死で止めようとしたあの人は、襲いかかる彼らの足首や手首を掴んでいた。
あたしを護ろうとしていたのは、すぐに分かった。
とにかく逃げなきゃいけない。
『蓮…………!』
あの人。
そう、あたしの愛した男の側近で。
あたしを護る為に、犠牲を払った強くて優しい男。
長瀬 蓮(ながせ れん)。
彼の為にも。



