……珍しいものを見ている気分だ。
叶花が喧嘩を売るようなことを言っている。
「どうして。執筆するために、本を読む。ちゃんとした活動よ」
一理ある。
これは後輩の勝ちだろうな。
叶花はこんな討論的なことをしたことがないだろうから。
「それはどこでもできるよ。ここでは、執筆したものを読みあって、意見交換しようよ。そのほうが、力がつく」
……嘘だろ。
あの叶花が、まともなことを……
「まあ、雨宮先輩の受け売りだけど」
……だろうな。
いつそんな話をしたのか知らないが。
そして、後輩にはその言葉が刺さったらしく、本を閉じた。
だが、俺は変わらず、本を読ませてもらう。
「古藤さんって呼んでたら、なんだか距離を感じる! ねえ、なんて呼ばれてる?」
……さっそく執筆とは無関係な会話が聞こえてくる。
まあ叶花は小説なんて書いたことないだろうし、話ができるとは思っていなかったから、そこまで驚きはしない。