「蓮くん、行こー?」
甘えた声に、上目遣い。
どこでそんなのを覚えたのか知らないが、そうすれば俺が行くと言うとでも思ってるのか。
甘く見てもらっちゃ困る。
「何度も言わせるな。俺は行かない」
「それは私も同じだよ、蓮くん。何度も言わせないで。行こう」
……終わりが見えない。
俺は呆れてため息が出る。
すると、なぜか叶花は目を輝かせた。
「行く!?」
なるほど、俺が折れたと思ったのか。
「行かない」
「なんで!」
……しつこい。
しつこくすれば、行くと言ってもらえると思ってるから、そうしているんだろうが。
たしかに、今まで叶花がしつこく言ってきたら、というか、言う前にわがままを聞いていた。
だが、今回は内容が内容だ。
簡単には頷けない。
「味方が一人もいないなんて辛いよ……」
叶花は足を抱えて座り、そう呟いた。
「理香子さんがいるだろ」