「……そうだ」
まあ、俺だってあんたに苦手意識を持って接してたんだ。
そこまで申しわけなさそうにすることはない。
お互い様だ。
「お兄ちゃんって、最低だね」
……ごめん、叶花。
それは俺にも当てはまるから、ちょっとやめてくれ。
「それに、蓮くんは亜美さんになにもしてないよ」
すると、結斗さんは顔を上げた。
今にも泣きそうな感じだ。
「でも、彼女はたしかに泣いていて、それは蓮くんに……!」
「もし蓮くんがそんなことをしてたなら、私が絶対に止めてる」
結斗さんの主張を、綺麗に遮った。
しかしまあ、そうだよな。
彼女がもし本性を見せていなかったとして、俺が泣かせるようなことをしたとなると、間違いなく、叶花は止めに入るだろう。
みんな仲良く、なんて言うやつだからな。
「叶花ちゃんが見てないところで」
「蓮くんが? わざわざ? なんのために?」
結斗さんの反論を遮ってのその疑問符の連続は、恐怖を感じる。
「それは……」
結斗さんはまた俯いてしまった。
しかし、思いつかないだろう。
基本他人に興味ないで通してるやつが、会って間もない人に用があるわけないし、そもそも俺はそんな面倒なことはしない。