いや、もし本当に恐怖を感じても、これが演技って可能性もある。



あの叶花が落ち込んでるんだ。


あんなふうに追い詰められるやつが、これくらいでビビるとは思えない。



「いいの、蓮くん。なにもないから」



その声に元気なんてなかった。



なにもない。



一体、何回その言葉を聞けばいいんだ。



何度も聞いて、どれもなにかしらのことがあった。



どうして俺に隠す。


俺を頼らない。



そんなに俺に心配されたくないのか。


俺は頼りないのか。



「……もう、子供じゃねえんだよ」


「蓮くん?」


「……ごめん、今関係ないこと」



俺の中にあるもやもやをなくすよう、自分自身を落ち着かせるよう、深呼吸する。



「叶花は怯えてた。落ち込んでた。怖がってた。あんた、本当になにしたの」



叶花になにを言っても、誤魔化されることはもうわかった。



だから、俺は彼女に聞いた。



「なにもしてないって言ってるでしょ!?」



俺が変に追い詰めたせいか、彼女は大きな声で反論してきた。



「亜美さん、ここ病院なんだ。声のボリューム、下げてね」