俺は重い腰を上げ、部室を出る。



「ごめんね、蓮くん。あとは任せた!」



叶花は結斗さんのところに行ってしまった。



特別棟は立ち入り禁止となっているから、ホームルーム棟との間にあるここに人が来ることは、滅多にない。



そういうわけで、俺は椅子を一つ持ってきて、座って部誌を開く。



「あれ、浅賀くん一人?」



ナイスタイミングだ、先輩。



「こっこは歩き売り、叶花は結斗さん……叶花の兄と回ってます」



俺は部屋に戻るために、立ちながら説明した。



「……浅賀くん、なにを?」


「サボります」



それだけを言い残して、ドアを閉めた。



「浅賀くん」



それなのに、ドアはすぐ開いた。



……また任せる、なんて言わないよな。



「お友達?」



そう言って顔を覗かせる先輩の後ろには、あいつがいた。



あいつは中に入ってきた。



「なんの用だ」


「蓮を呼びに来たんだよ。お前、クラスのほうもあること、忘れてないか?」


「クラスには行かない。そう言っただろ」