それを聞いた瞬間、俺は結斗さんの胸ぐらを掴んでいた。
「……蓮くんはなにも知らないから、怒れるんだよ」
どうして。
どうして、義理であっても兄のくせに、そんなことが言える。
「医者を……目指してるんだろ」
「だから、わかるんだよ。世の中には治せない病気だってある。叶花ちゃんは、その治せない病気だ。となると、少しでも長く生きられるサポートをするしかないでしょ」
……だとしても、言っていいことと悪いことがある。
「ちょっと蓮くん! お兄ちゃんになにしてるの!」
叶花の声で、俺は少し冷静になった。
乱暴に結斗さんを離し、公園を出る。
「蓮くん!」
だけど叶花は追いかけてきた。
「空気を乱すやつは退散するよ」
叶花にとって、今の俺は邪魔者だ。
……もとから邪魔だったりしてな。
そう思うと、過去の自分を嘲笑してしまった。
「お兄ちゃんに、なにを言われたの?」
すると、叶花が真面目な顔で俺を見ていた。
「え……」
叶花には聞こえていなかったはず。
それなのに、どうしてそんなことを……