「叶花、そろそろ返せ」



八月になって、課外や部活がなくなった。


そのせいで、叶花は毎日のようにうちに来て、俺のスマホでこっことメッセージを送り合っていた。



「もうちょっと待って!」



ソファーに寝転がってスマホを操作している叶花は、片手を挙げた。



……そんなに言うなら、自分のスマホを買ってもらえよ。



なんて、言っても無駄なことくらい知ってるから、言わない。



「蓮くん、瞳ちゃんが家にいるのって、いつかな?」



体を起こして、やっとスマホから目を離したと思えば、なぜそんなことを聞いてくる。



「さあ、知らないけど」


「そっかあ……」



叶花はまた寝転がった。


……戻るなよ。



「なにか用でもあったのか?」


「花火、いつしようかなと思って」



そういえば、そんなことも言ったな。



……本気にしたのか。


というか、覚えていたのか。



俺はすっかり忘れていたのに。



「悪いけど、母さんのシフトなんて把握してない」


「じゃあ、わかったら教えてね」



そうして、やっとスマホが俺の手元に戻ってきた。



「なにか飲むか?」



俺は食卓にスマホを置いて台所に入りながら、またソファに寝転がる叶花に聞く。