理香子さんは仕事で、結斗さんはまだ夏休みに入っていないから、連れて行ける人がいなかった。
「相手はあのこっこだよ? 絶対早めに来る」
たしかに、そんな感じはするけど。
だからって、一時間も前に行く必要はないだろ。
「叶花ちゃん、いくら早く来るような子でも、祭りが始まる一時間前には来ないよ」
すると、母さんが叶花を説得してくれた。
叶花の顔から笑顔が消えていき、難しい顔になった。
……そんなに考えることか。
「……わかった」
叶花は母さんの言うことを聞き、俺たちは一時間後に出発した。
到着してもまだ祭りは始まってなくて、ほとんど出店や催し事に関係のある人しかいなかった。
だけど、こっこは三十分もしないうちに来た。
「こっこー!」
こっこの姿を見つけた瞬間、叶花はこっこに飛びついた。
「さくら、浴衣は? あんなに着たいって言ってたのに」
こっこは叶花を引き離した。
「あのね、慣れない浴衣を長い間着るのはやめといたほうがいいって、瞳ちゃんに言われたの」
「……瞳ちゃん、とは」