6時半起床。いつもと同じ朝ごはんに支度。黒縁眼鏡に大雑把に束ねただけの髪。気持ち程度の化粧で7時の電車に乗り込む。この生活を始めてもう11年の月日が経った。私赤井那智はアパレル会社の営業事務に勤めている35歳独身。アパレル会社といえばオシャレなんじゃないの?というイメージを持つだろう。大半の人はそうだが、私みたいな下の下の女はTHE地味とこんなもんである。大卒新入社員として入った頃は部署内でも一番歳下だったが、11年も経てば同部署の女性社員の中でも最年長ともうおばさんである。会社の人と必要以上に関わらないで黙々と仕事をしていて付いたあだ名が"雑用お局様"。歳下の女の子に雑用を頼まれる扱われっぷり。朝はいつと出勤が嫌になる。

そんな私が唯一輝けるのは帰宅後に趣味であげているネット小説だ。本を読むのが好きで、書いてみたい!と思い始めたが予想以上に才能があったみたいで、読者からのコメントを読んでいる時が一番幸せである。長期連載は向いていなかった為、最後は幸せになれるそんなショートストーリーを書いていた。
誰にも内緒で書いているからバレたくないなぁと思っていた私はかなり甘い考えだったとこの後気付くことになる。