教室に戻れば、もう帰りのホームルームの時間で
私とゆきは慌てて先生に出欠を確認しに行った
「お前ら仲良く連れションか?」
「先生ー、女子に向かって連れションとかセクハラですよー!?」
「そーだそーだ!」
「あーわかったわかったとりあえず席着け」
そんなやり取りで笑っていると
ふと視線を感じた
そちらを見ると
『 く ぼ か わ 』
あ、西谷くん
口パクの相手に合わせて私も小声になる
距離はおよそ10メートル
『 な あ に』
『 な か な お り で き た ?』
西谷くんはいつものように心配そうな顔をして言う
『 う ん 』
なるべく悟られまいと笑顔を作ったけど
西谷くんはまた眉をひそめて
『 へ い き ?』
そう声を掛けてくれた
どうしてこんな優しくしてくれるのか
頭にハテナを浮かべつつ
私はさっきより自然な笑顔で返事した
『 ゆ き と な か な お り 』
Vサインしてみせて
それを見た西谷くんがふわりと笑った
ドキン、
えっ
何で今私ドキッとしたんだろ
私、佐藤くんが好きなはずなのに
私の知らないうちに
その歯車は
ゆっくりと動き出していた
