「あと3枚だけいくね、うんいい感じ」

次々に、フラッシュの眩い光が瞬く。

「じゃあラストでーす。いいね、それ可愛い!」

今日は馴染みの雑誌の、馴染みのカメラマンさんによる撮影。
終始和やかな空気感の中でひと段落した撮影にほっと一息つきながら、鞄からスマホを取り出した。

ロックを解除する前に表示された、いくつかのメッセージのポップアップ。
その中に思い描いた人の名前はなくて。アプリを開いてゆっくりと画面をスクロールしてみるけれど、やっぱり彼の名前は見当たらなかった。

「昨日、風邪引かなかった?…うーん。最近仕事どう?…うーん」

文字を打っては、消して。また打って、また消して。
メッセージなんてなんでもいいはずなのに。なぜかしっくりこなくてなかなか文章が決まらない。

「おーい、眉間のファンデがよれるよ〜」
「!」

突然横から聞こえた声に勢いよく顔を上げると、思っていたよりも近くに森ちゃんの顔があった。

「ご、ごめん!ぼーっとしてた」
「ぼーっとっていうか、悩ましい顔だったけどね」
「うう…」
「なんか悩みごと?」

森ちゃんは私が地方のフリーペーパーのモデルをしていた頃からの仲良しのメイクさんで、今も指名して仕事の依頼をさせてもらっているお姉ちゃんみたいな存在の女性だ。