聞こえた声と一緒に肩に乗せられた感触に振り向くと、そこにあった人差し指に頰が突き刺さる。

「うぉい」
「引っかかったっすね。僕の勝ちです」
「は?お前何言って…」
「引っかかった涼さんの負けなので、大人しく俺と麻子さんの言うこと聞いてください」

思いのほか勢いがよかったようでいまだ感覚が残る頰をさすりながら、向き直る。

「ベテランの俺ともはやベテランの域の麻子さんですよ?泥舟に乗ったつもりで安心して任せてください!」
「泥舟だったら沈むわよ。大船ね」
「え?ああ、大船!」

間髪入れずに飛んできたツッコミにはっとしたように言い直した太一が何事もなかったかのように力強く頷く。隣でこっそりため息を付いている麻子ちゃんとはなんだか姉弟のようだ。

「それに麻子さんの安全は俺が責任を持って守るんで!ていうか、麻子さんになんかあったら颯さんが怖すぎる…」
「ふふ、よろしくね」

結局有無を言わせない彼らに首を縦に振った俺は、早速美己に連絡を入れたのだった。