「今思ってることをそのまま伝えればいいと思うよ」

全てお見通しだというような笑顔を浮かべた彼女の手が、最後の一口を口元へと運ぶ。役目を終え綺麗になった皿の上に置かれたフォークがカタンと小さく音を立てた。

意識を呼び戻すには十分だった少しだけ高いその音にはっとして、反射的に手元を動かす。

「さ、伝えるべきことははっきりしたんだから、あとは行動のみ!ね」

問題はそこだ。現実的に考えて美己とゆっくり話せるのは颯が帰ってきてからになるだろうから…週末くらいになるだろうな。美己の予定を聞いておかないと。

「颯が帰ってきたら休みもらおうと思ってるから、そのときにでもゆっくり話してみる…」
「今日変わるから」
「え?」
「涼くんのシフト。だから今日話してきて」

予想外のそんな台詞に数秒間を空けてしまったものの、思考を元に戻す。

「や、ありがたいんだけど…でもそれはちょっと現実的じゃないんじゃないか?」
「私じゃ安心してお店任せられない?」
「いや、任せられないというか…」

申し出はありがたいけれど、まだ入って間もない彼女を残すのは気が引ける。
それに女性を夜中まで残すのは…

「じゃあ俺が一緒に残ります、今日」